戸籍の広域交付で全国どこでも戸籍がとれる
令和6年3月から戸籍が全国どこでも取得できるようになりました。
これまでは、本籍地のある市区町村に直接請求して取得するしかなかった戸籍が、自分の住まいや職場の近くなど、最寄りの市区町村役場でどこでも取得できるようになりました。
便利になった反面、注意点や今まで通りの不便さも残されていますので、中野相続遺言相談センターが戸籍の広域交付制度について詳しく解説します。
戸籍の広域交付が便利なわけ
相続手続きでは、はじめに戸籍を収集して相続人調査を行います。
誰が相続人かを親族でわかっていて、その相続人間で遺産分割内容を決めたとしても、金融機関や登記所からすると、相続する権利が誰にあるかは、戸籍で確認しないとわかりません。
ですので、戸籍や法定相続情報一覧図を提出して、だれが相続人なのかをはっきりさせて、相続人全員が遺産分割内容に合意していることを金融機関や法務局などに証明する必要があります。戸籍を収集して相続人調査をしないと、預貯金の解約、株などの有価証券の移管、不動産の名義変更など実際の遺産承継ができないことになります。
具体的には次の戸籍謄本を取得して相続人調査を行います。
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍
- 相続人の現在の戸籍
- 相続人になるはずだった子や兄弟姉妹などが先に亡くなっている場合は、その方の出生から死亡までのすべての戸籍
戸籍は、生まれたとき、戸主の家督相続、親の転籍、結婚、亡くなった本人の転籍などのたびに戸籍が作られており、遡ってすべての戸籍を取得するには大変面倒で時間もかかります。しかも古い戸籍は手書きですので、読みづらいものも多くあります。
中野相続遺言相談センターでは、毎日このような戸籍収集を行っていますが、わたしども相続の専門家が行っても通常は1ヶ月半から2ヶ月くらい、代襲相続が発生している相続、兄弟姉妹が相続人となる相続の場合は3ヶ月から4ヶ月くらいかかることもあります。
戸籍の広域交付は、亡くなった方の戸籍を最寄りの市区町村役場でまとめて取得する制度で、これまでのように何度も市区町村役場に戸籍を請求する手間がなくなり、相続人調査が早くすむ便利な制度です。
戸籍の広域交付の不便な点
広域交付制度はとても便利な制度ですが、いくつか不便な点も残っています。
1.戸籍を請求できる人が限られていて、すべてが一回でそろわないこともある
全国どこでも戸籍を請求できる方は次の通りです。
- 本人
- 配偶者
- 父母、祖父母など(直系尊属)
- 子、孫など(直系卑属)
注意点としては、兄弟姉妹の戸籍を取得できないこと、配偶者の父母の戸籍を取得できないことです。
広域交付制度を利用して取得できる戸籍と取得できない戸籍について、具体的にみてみましょう。
ケース1
子が3名いる父に相続が発生して、未婚の子と既婚の子が相続人にいる場合に、子が戸籍を収集する
◯最寄りの市区町村役場で取得できる戸籍
- 父の生まれた時から死亡までの戸籍
- 自分(未婚の子)の現在の戸籍
✕最寄りの市区町村役場で取得できない戸籍
- 結婚している等で転籍している子の現在の戸籍
解決策
- 相続人に自分で取得してもらう。
- 委任状をもらい、代わりに本籍地の市区町村役場へ直接請求して取得する。
ケース2
子どもがいない夫婦で夫に相続が発生して、妻と夫の兄弟姉妹が相続人になる場合に、妻が戸籍を収集する
◯最寄りの市区町村役場で取得できる戸籍
- 夫の生まれた時から死亡までの戸籍
- 自分の現在の戸籍
✕最寄りの市区町村役場で取得できない戸籍
- 夫の父の出生から死亡までの戸籍
- 夫の母の出生から死亡までの戸籍
- 夫の兄弟姉妹の現在の戸籍
解決策
- 夫の兄弟姉妹に義理の父、義理の母の出生から死亡までの戸籍と兄弟姉妹の現在の戸籍を取得してもらう。
- 委任状をもらい、夫の兄弟姉妹の代わりにそれぞれの本籍地の市区町村役場に直接請求し取得する。
2.必ず窓口に行く必要がある
戸籍は郵送でも請求できますが、広域交付制度を利用して、亡くなった被相続人の出生から死亡までの戸籍をまとめて最寄りの市区町村役場で取得する場合には、必ず窓口に出向く必要があります。
しかも、ほとんどの市区町村役場では、窓口に出向いて請求してもその場ですぐに取得できません。朝から夕方まで何時間も待つ場合や、後日もう一度市区町村役場まで出向く必要がある場合もあります。
中野区役所では、事前予約がない場合でも5営業日以降に取得できることがほとんどですが、市区町村によっては請求してから取得まで1ヶ月ほど待つ場合もあるようです。
中野区の広域交付制度の利用についてはこちら3.必ず顔写真付き本人確認書類を持参しなければならない
通常、本籍地の市区町村役場で戸籍を取得するときも本人確認書類は必要ですが、健康保険証など顔写真のない本人確認書類でも取得できることもあります。
戸籍の広域交付制度を利用する場合は、運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等の顔写真付き身分証明書の原本を持参して、窓口で本人確認を受けないと戸籍を取得することができません。
4.代理人は請求できない
通常、相続で必要な戸籍を収集するときは、委任状があれば代理人でも取得できます。また、行政書士などの国家資格者は職務上請求制度を利用し取得することができます。
たとえば、わたしども国家資格者がいる中野相続遺言相談センターでも、委任状をいただいたり、職務上請求制度を利用したりして、毎日、戸籍を取得しています。相続人が平日昼間は仕事や育児で市区町村役場に行く時間がない場合や、高齢者施設に入所していて役所に行けない場合などは、相続人ではないものの身内である、相続人の夫や妻、いわゆる婿や嫁が相続人に代わって取得することもできます。
しかし、戸籍の広域交付制度を利用する場合は、委任状があっても代理人が請求することはでません。
必ず、相続人本人が最寄りの市区町村役場へ出向いて取得する必要があります。
5.広域交付制度を利用しても取得できない戸籍証明書がある
戸籍の広域交付制度を利用して取得できるのは、全部事項証明書(戸籍謄本)、除籍全部事項証明書、除籍謄本、改製原戸籍謄本です。
取得できないのは個人事項証明書(戸籍抄本)、一部事項証明書、戸籍の附票の写し、戸籍諸証明(身分証明書、独身証明書等)です。
また、現在ほとんどの戸籍はコンピューター化されており、広域交付制度で取得することができます。ですが、ごくまれに、コンピューター化されていない戸籍があり、こういった戸籍は通常通り、本籍地の市区町村役場へ直接請求しなければ取得することができません。
6.実際の相続手続きで必要な戸籍の附票や住民票除票は取得できない
実際の相続手続きでは、預貯金の解約、不動産名義変更などの遺産承継の際に、金融機関や法務局で亡くなった方の最後の住所地や相続人の住所を確認されます。同姓同名の別人ではないということを住民票の記録で証明する必要があるためです。
その時に必要となるのが、戸籍の附票や住民票の除票です。しかし、戸籍の広域交付制度では戸籍の附票や住民票の除票を取得することができません。
そのため、相続手続きに必要な戸籍がまとめて取得できたとしても、戸籍とは別に戸籍の附票または住民票の除票を取得する必要があります。
- 戸籍の附票を本籍地のある市区町村役場で取得
- 住民票の除票を亡くなったときの住所地の市区町村役場で取得
広域交付制度を利用できない場合
相続人本人が平日の昼間は仕事がある、育児や療養等で外出が難しく最寄りの市区町村役場にも行けない場合、兄弟姉妹、甥姪の戸籍が必要な場合は、これまでどおり本籍地の市区町村役場へ直接請求して戸籍を取得する必要があります。
遠方の市区町村に本籍がある場合には、郵送で申請することもできます。郵送で戸籍を取得する申請方法のおおまかな流れは次のようとおりです。
- 戸籍等交付申請書を本籍のある市区町村のホームページからダウンロードして印刷する。
- 印刷した申請書に必要事項を記入する。
- 本人確認書類のコピーを用意する。
- 取得したい戸籍の対象の方(亡くなった被相続人や共同相続人)と申請する人の関係がわかる戸籍を用意する。(コピー可)
- 封筒と切手を送る用と返信用の2部ずつ用意する。
- 返信用封筒に返信先を記入し、切手を貼り付ける。
- 戸籍等交付手数料を郵便小為替で用意する。
- ②~⑦で用意したものを送る用の封筒入れ、本籍のある市区町村役場宛に郵送する。
中野区へ戸籍等を郵送請求する場合
必要な書類や手数料を、「戸籍住民課 証明係」へ郵送してください。
申請書などをポストにご投函いただいてから証明書がお手元に届くまでに、10日から2週間程度かかる場合があります。期日がある場合にはお早めにご申請ください。
- 本籍地が中野区でない場合は申請できません。
申請に必要な書類
- 申請書(戸籍証明交付申請書(郵送用)(PDF形式:170KB))
- 手数料(無記名の定額小為替または現金書留)
- 返信用封筒(封筒に住所・氏名を記入し、重さに応じた郵送料の切手を貼ってください。定型サイズ普通郵便25gまでは84円です。)
- 本人確認書類の写し(現住所の記載があるマイナンバーカード・住民基本台帳カード(写真付き)・運転免許証・健康保険証・年金手帳などのいずれか1点)
- 必要に応じた関係確認書類の写し
送り先
〒164-8501
中野区中野四丁目11番19号 中野区役所 戸籍住民課 証明係あて
証明書の手数料(1通あたり)
- 全部・個人事項証明(戸籍謄本・抄本) 450円
- 改製原戸籍謄本・抄本 750円
- 除籍謄本・抄本 750円
- 戸籍の附票の写し 400円 (窓口申請時と金額が異なります。)
証明書の使用目的によっては、手数料が減免されることがあります。詳しくは中野区役所までお問合せください。
中野区役所へ戸籍等を郵送請求する場合の注意事項
- 戸籍の証明書は、戸籍に記載されている本人またはその配偶者、直系の方が請求することができます。(本人以外が請求する場合、委任状が必要です。)
- 相続で、必要な戸籍の種類がわからない場合は、「※※※※の相続手続きのため、出生から死亡までの一連の戸籍が△通必要」など、必要な内容を具体的に記入してください。
- 中野区役所では、申請してから受け取るまで10日から2週間程度かかります。 (お急ぎの場合は速達などをご利用ください。※返信用封筒の切手手数料にご注意ください)
- 申請内容の不備や手数料等が不足しているなどの場合は、申請書が返送されることがありますので、申請書には昼間連絡のとれる電話番号を必ずお書きください。
- 偽り、その他不正な手段により交付を受けたときは、30万円以下の罰金に処せられます。(戸籍法)
戸籍等を請求する際に注意すること
(1)郵送料の不足
令和元年10月から、普通郵便25gまでは84円切手、25g以上は94円切手を貼り付けて郵送ください。切手が不足していると、市区町村役場で受取拒否され、郵送し直すことになりますので、ご注意ください。
申請通数が多い場合には、切手を多めに貼るか、10円切手を数枚同封しておくことをおすすめします。お急ぎの場合、速達料260円切手をプラスして貼り、その旨を表示しておけば市区町村役場が速達で返送してくれます。
(2)戸籍等交付手数料の不足
市区町村役場で計算された金額と封筒に入れた手数料が異なり、郵便小為替が足りない場合、追加の郵便小為替を郵便局へ買いに行って、再度郵送することになります。市区町村によって手数料も異なりますので、事前に市区町村役場へ手数料について確認しましょう。
中野区役所へのお問い合わせはこちら(3)時間がかかる
郵便で戸籍の請求をする場合、発送から戸籍が返送されてくるまで、1週間から2週間程かかります。返送されてきた戸籍を確認して、亡くなった方の出生から死亡まですべてがそろうまで、何度もこの一連の流れを繰り返し行います。お急ぎの場合や、相続人調査にお困りの方は中野相続遺言相談センターまでご相談ください。
(4)必要書類の取得忘れ
戸籍の広域交付制度で取得することができない書類である、亡くなった方の住民票の除票や戸籍の附票も相続手続きでは必要になります。最後の住所地がある市区町村役場で同様の手順で請求することができますので、忘れないようにご注意ください。
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中野相続遺言相談センターは中野区役所の目の前のビルにあります。
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