相続手続きでは遺された財産を相続人全員が納得するように遺産分割手続きをしなければなりません。しかし、相続人が多い場合や話し合いがまとまらない場合など、手続きが滞ってしまうことも少なくありません。
また、遺産分割協議をするには相続人全員の合意が必要となりますが、様々な事情で参加ができない場合や、そもそも話し合う意思がない相続人がいることもあります。
このような話し合いが停滞している場合では、遺産分割調停を利用できます。遺産分割調停を利用したい場合は、家庭裁判所に相続人が申し立てを行います。これを行うと、裁判所が弁護士を選任し、調停員となって遺産分割の仲介を進めてくれます。
遺産分割調停が利用されるケースとしては、法律上の判断が求められる寄与分、遺留分、特別受益等があります。
- 寄与分
生前の被相続人の介護を長期にわたって無給で続けていた場合などの特別な寄与をしていた場合に認められ、認められるとその分の相続財産を他の相続人より多く受け取れる制度のこと。しかし、認められるにはハードルが高く、相続人の間で衝突も起こりやすい。 - 遺留分
一定の相続人に保証されている最低限の相続財産の取り分のこと。遺言書の内容が特定の誰かに多くの財産を相続または遺贈するという内容だった場合、相続人は遺留分を主張することで最低限の相続分を確保できる。 - 特別受益
特定の相続人が、生前の被相続人から多額の贈与があった場合、その贈与された分を相続財産とみなして公平になるように遺産分割をすること。
遺産分割調停の申し立てに必要な書類
遺産分割調停の申し立てには、必要な書類が多数あります。
申し立てを行う前に、書類の確認をしましょう。必要な書類は以下の通りです。
- 財産目録
- 相続関係図
- 遺産分割調停申立書
- 相続人全員の戸籍謄本
- その他
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は1カ月に1度程度のペースで、最低4回から5回行われます。
また、調停が不成立になってしまった場合は、裁判官による審判がなされます。遺産分割は調停前置主義という、訴訟や裁判を提起する前に調停を経なければならないとしている制度となっているため、原則として調停の後に審判へ進む流れとなります。
遺産分割調停のメリット・デメリット
遺産分割の際に、相続人の間で話し合いがまとまらない場合に利用される遺産分割調停ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。メリット・デメリットについては以下にまとめました。
メリット
- 話がまとまりやすく、公平な解決になりやすい。
- 調停委員が間に入るため、相続人同士で直接話会わなくて済む。
デメリット
- 申し立ての手続きに時間と手間がかかる。
- 代理人として弁護士を依頼すると高額な費用がかかる。
- 調停の合意に至るまで数か月から1年ほどかかる。
- 相続人全員の合意がなければ不成立になってしまう。
- 平日午前10時から午後5時までの間にしか開かれない裁判所での調停に出向かなければならない。
これらをふまえて遺産分割調停を利用するか検討すると良いでしょう。
遺産分割調停の前までに、公正中立な立場の専門家に相続に関与してもらうことで調停や裁判が不要になることがあります。調停に発展してしまいそうな相続がありましたら相続の専門家に依頼することで解決が図れるかもしれません。ぜひ、ご相談ください。